長野

コラム 信州の風

信州の鎌倉

長野県金融広報委員会事務局長(日本銀行長野事務所長) 佐藤俊彦

 去年11月、東京への出張の途中で、別所温泉に寄り道した。上田駅から上田電鉄別所線で30分。独鈷山など周囲の山並みが青空にくっきりと映え、「信濃のまほろば」塩田平の長閑な田園地帯を走る電車の旅は最高に気分が良かった。
 鎌倉幕府の執権北条氏の一族に連なる塩田北条氏の所領であったこの地は、数多くの寺院が建立され、「信州の鎌倉」と言われる。私の自家は鎌倉に近い茅ヶ崎にあり、わざわざ「信州の鎌倉」に行く必要もあるまいと、長野に赴任後1年以上も当地を訪れていなかったが、大いに感動した。別所線もさることながら、北向観音堂、安楽寺八角三重塔、常楽寺など、由緒ある寺院が程良い距離に点在し、しかも、鎌倉にはない温泉もある。鎌倉と箱根を合わせたようなものだ。塩田町駅から別所温泉駅までの道を歩いて前山寺や龍光院などにも立ち寄る時間はなかったが、機会を改めて訪れるつもりだ。
 ところで、地方鉄道の例に漏れず、上田電鉄別所線も経営が厳しいようだ。公共インフラを維持・存続させるには、納得性のある公的支援と受益者負担、その一方での利用率の向上しかない。「乗って残そう」を合言葉に住民団体も協力して行っている様々な運動の成果も少なからず出ていると聞くが、折からの「歴女」ブームなども味方につけて、利用客が増えればと願っている。

ながの金融広報だより 第124号 掲載

冬の信州

長野県金融広報委員会事務局長(日本銀行長野事務所長) 佐藤俊彦
(出展)Wikipedia

 長野市内では、11月の頭に平年より18日も早く初雪を観測した。これから本格的な冬を迎える。これまで青森、秋田と勤務し、雪と寒さは十分に経験済みとは言え、皮下脂肪の少ない身(決して自慢しているわけではありません)にとっては、信州の冬の寒さは堪える。
 もっとも、冬は冬こその楽しみがある。残念ながらスキーをやる元気はなくなってしまっているが、何と言っても、信州には至る所に温泉があるのがいい。社宅マンションの近くにも裾花川温泉があるが、ここは保温効果が極めて高く、年に数回こちらにやって来る私の家族にも大好評だ。
 温泉には人間だけでなく猿も入るということを、昨年当地に赴任して初めて知った。地獄谷温泉のSnow Monkey。世界的にも珍しいと言う。世界に誇れる観光資源だ。
 10月に当委員会が開催した金融経済講演会で、講師の逢坂ユリ氏から、「今後中国からの観光客に対する期待が大きくなるが、中国人が行き先として選ぶポイントは美しい自然」という話を聞いた。「兎追いしかの山〜」の唱歌「故郷」は中野市(旧豊田村)が舞台。ここは日本人の心の故郷と言える。
 信州には美しい自然がいっぱいある。信州の自然の魅力を内外に大いにPRし、県内観光産業の活性化に繋げたいものだ。

ながの金融広報だより 第123号 掲載

二宮金次郎から学ぶ

長野県金融広報委員会事務局長(日本銀行長野事務所長) 佐藤俊彦

 私の出身地小田原(神奈川)は、北条早雲を初代とする戦国武将の北条氏が有名だが、私は、小田原が生んだ最大の偉人は二宮金次郎(尊徳)だと思っている。
 二宮金次郎というと、薪を背負って本を読んでいる少年時代の姿ばかりがクローズアップされるが、今から200年前、農民の出でありながら、関東を中心に600余りの村々を復興させた人物である。「日本で一番不況に強い男 二宮尊徳の成功実学に学べ」(瀧澤中著)という本が最近出版されているが、「勤労」、「分度」、「推譲」、「積小為大」、「心田開発」など、彼の思想は、今の時代にも通じるものがある。
 二宮金次郎は、「お金は卑しむものではない。お金の中に徳を発見し、その徳を掘り出して人間の生活を豊かにするために活用しろ」と言っている。つまり、「人間がお金に振り回されるのではなく、逆にお金を人間が振り回す(活用する)」ということである。正に、『金融(金銭)教育』の原点である。今回の世界的な金融危機の原因の一つが、いわゆる「マネーゲーム」にあったことを考えると、人間というのはいつの時代も変わらないもの、懲りないものだと思わざるを得ない。二宮金次郎の言葉を肝に銘じたいものだ。

ながの金融広報だより 第122号 掲載

御開帳と金融

長野県金融広報委員会事務局長(日本銀行長野事務所長) 佐藤俊彦
 7年に一度の善光寺御開帳が終わった。昨年7月に東京から長野に転勤し、善光寺から徒歩数分のところに住まわせて貰っているため、御開帳期間中は何度も善光寺に参詣し、回向柱のご利益にすがった。
 撥当たりなことを言うようだが、回向柱はそれ自体1尺5寸(45cm)角の過ぎの柱に過ぎない。これが、前立本尊と「善の綱」で結ばれることで、人々がありがたがるのである。お札(銀行券)もこれと同じではないか。それ自体はただの紙である。それが通貨として流通するのは、お札を発行している日本銀行に対する全幅の信頼があるからだ。翻って、昨年9月のリーマン・ショック以降の世界的な金融危機では、金融商品に対する人々の信頼が大きく損なわれた。アメリカインディアンのことわざに、「信頼は徒歩でやって来て馬に乗って去っていく」というのがある。一度損なわれた信頼を回復するのはなかなか難しい。回向柱を見ながらそんなことを思った。
 御開帳には県内外から実に多くの参詣客が訪れた。県内景気回復のきっかけになることを切に望む。
ながの金融広報だより 第121号 掲載
























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