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家計の資産形成とNISA

    2024年の干支は辰ですが、十干十二支では60年に一度の「甲辰(きのえ・たつ)」になります。「甲」は十干の第一番目で、生命や物事の始まり、成長を意味するとのことです。「辰」は草木が成長して活力が旺盛になる状態を表し、また、空想の生きもの龍(竜)をも意味し、権力・隆盛の象徴として親しまれてきたものです。
 60年前の「甲辰」の1964年は、アジア初となる東京オリンピックの開催や世界初の高速鉄道「東海道新幹線」が開業した年でもありましたが、今年はというと、家計の資産形成の関係では、7月3日には新しいお札の発行が予定されているほか、年初からは抜本的拡充・恒久化が図られたNISA(少額投資非課税制度)の取扱いが開始されています。県内の金融機関の店舗にもNISAの案内があふれていますね。
 もっとも、こうしたNISAを活用するためには、金融リテラシーとしても示されている、家計における資産形成の基本を踏まえる必要があります。というのも、NISAも元本保証の商品ではありません。つまり、NISAもリスクを伴う投資ですので、これに積み立てる資金は、支払いの予定のある生活資金以外の家計における余裕資金を充てることが大切な鉄則です。そのうえで、安定的な資産形成を目指すには、長期・積立・分散という点も確り意識して利用したいところです。
 このため、予め自らのライフプランを描いて、資産形成の目標(リスク許容度の観点からは希望する目標額だけでなく、目減りしても最低限確保したい額を含みます)を設けて運用することも重要な視点です。この点、新しいNISAでは、非課税枠は取り崩した後もその分の枠をさらに利用できるようになりましたので、例えば、住宅ローンの頭金として必要額を取り崩した後、その枠を含め、将来の教育資金として中長期の運用を図るといったように、一定の支出を伴うライフイベントに対応した資産形成にも有益なものとなりました。その際留意したいのは、老後資金のための資産形成を目的としたiDeCo(個人型確定拠出年金)の場合は、目的とする額に達したところで、その資産の目減りを避けるために定期預金等の安全資産にスイッチングできますが、NISAには、こうした機能はありませんので、そのライフイベントの前に目的額に達したところで、その必要額を取り崩し、これを預金等の安全資産に移し替えておく必要がある点です。
 また、NISAは海外への転勤や留学等がある場合には、出国の前日までに、NISA口座のある金融機関に必要な届け出を行えば、最長5年間その非課税口座で保有できますので、海外転勤等が見込まれる方は、こうした取扱いが可能な金融機関か否かも確認してこれに備える必要があります。このほか、このNISAについて、複利効果を活かして資産形成を行いたい場合には、投資信託で運用するときは分配金のないものを選択するなどの工夫もあると思います。
 この「甲辰」の年に装いも新たになったNISAは、家計における資産形成の強い味方です。このNISAを活かして家計の大切な資産を育み実あるものにするためには、先ずは、確り家計管理のうえ、家計における資産形成のあり方(基本)を踏まえて、そのライフプランにあわせて利用することが肝要です。

ながの金融広報だより 第168号 掲載

 


信州と海

    海なし県の当地に「信州の海」。長野県に隣接しアクセスのよい日本海の海水浴場を親しみ込めて呼ぶものだそうだ。山に囲まれる信州と「海」との関係は縁遠いイメージですが、古の時代から浅からぬものがあるようです。
 古墳時代には、既に、渡来人によって大陸系の文物がもたらされる一方で日本書紀には海を渡って百済における信濃人(出身の国「斯那奴または科野」を姓に冠した人物)の活躍が記されているなど、往来が窺われます。また、安曇野の由来は、古代九州北部を本拠とし海運を司り中国や朝鮮とも交易していた「阿(安)曇族」が移り住んだものと伝えられており、平安時代に編纂された延喜式神明帳に記載されている明神大社穂高神社には安曇族の祖神とされる海に関係する神々が祭られているのは興味深いところです。
余談ですが、松代のお城の名前にもみられる「海津」という地名にも、内陸の地名として不思議に思われますが、諸説ある中には、大昔この一帯が大きな湖だったとか千曲川の川船の港(津)があったからとするものもあるようです。
 「敵に塩を送る」は有名な上杉謙信の美談ですが、信州には、こうした当時からたいへん貴重だった塩の流通網も早くから整備されていました。江戸時代に至っては、北国街道ルート、千国街道ルート、木曽川・中山道ルート、矢作川・飯田伊那ルート、富士川・甲州街道ルート、利根川・中山道ルートといった、信州と「海」とを繋ぐ「塩の道」を有していました。因みに、「塩尻」との地名には、山間部では手に入らない塩の流通の尻(太平洋側の南塩と日本海側の北塩が出会う終着点)として名づけられたとする説があるそうです。
 日本を代表する貿易港「横浜港」もまた信州と関わりの深い「海」です。開港当時の横浜港から海外への最大の輸出品目は生糸でした。当時、良質な生糸の産地の一つとして、信州からも、中山道や甲州街道等の陸路や利根川といった水路の「シルクロード」を通じ、横浜港から海外に輸出していました。信州の生糸・蚕糸業は、地元の良質な材料(蚕種製造・養蚕)と製糸の技術革新を図るとともに、流通面でも明治21年以降、信州と横浜を結ぶ鉄道網が整備・強化されていきました。こうした中、信州は明治10年頃から蚕糸王国として国内シェアトップに君臨し、明治43年には日本を世界一の生糸輸出国に押し上げました。やがて、養蚕・製糸業が衰退する中、精密機械工業等の輸出ウエイトの高い産業育成を移し、現代に至ることは周知のことです。
 古の時代より現代に至るまで、それぞれの時代に、当地内外の文化や産物を結ぶ流通・ネットワークが構築されていたことに驚かされます。国内外でサプライチェーンの再構築が求められる現代においても、こうした当地の持つレジリエンス・風土が信州の未来を紡いでいくことでしょう。
ながの金融広報だより 第167号 掲載

 


お金の今昔物語

    みなさんご存知の通り、日本銀行では、2024年7月前半を目途に、一万円券、五千円券、千円券の3券種の改刷を予定しています。前回が2004年ですので、約20年振りの改刷です。また、戦後の大きな改刷という点では今回が6回目となります。
    新しいお札に描かれる肖像は、一万円券が「渋沢栄一」(現在「福沢諭吉」)、五千円券が「津田梅子」(現在「樋口一葉」)、千円券が「北里柴三郎」(現在「野口英世」)にバトンタッチされます。偽造防止に優れた日本のお札ですが、新しいお札では、世界初となる「(傾けると、三次元の肖像が回転する)3Dホログラム」や「高精細のすき入れ」といった新しい偽造防止技術が取り入れられています。また、ユニバーサルデザインの観点でも、券種の視認性を高めるため、額面数字を大型化し、触っても券種が分かるよう、券面の識別マーク等にインキを高く盛り上げる印刷技術(「深凹版印刷」)を施しています。
    新しいお札の信州とのゆかりをみると、一万円券の肖像「渋沢栄一」の関係では、長野・藤屋に投宿し善光寺を参詣、財団法人善光寺保存会の会員として寄進されている記録があるほか、現在の八十二銀行の前身となる、上田・第十九国立銀行の創立などにも関わっています。また、千円券の裏面には、晩年小布施に滞在していた葛飾北斎の「富嶽三十六景(神奈川沖浪裏)」が描かれています。

新しい日本銀行券

【新一万円券】 【新五千円券】 【新千円券】
(表) 渋沢栄一 津田梅子 北里柴三郎
(裏) 東京駅(丸の内駅舎) フジ(藤) 富獄三十六景「神奈川沖浪裏」


    お金の成り立ちをみますと、物々交換の時代を経て、経済の発展とともに、米や貝等の「物品貨幣」から、金等の「金属貨幣」、貴金属の預かり証としての「兌換紙幣」、現在の紙幣につながる「不換紙幣」との変遷が大きな流れです。
    「物品貨幣」には、米(稲)、矢じり、砂金、麻布、貝などがあります。このうち、「貝」については、約3千年前の殷の時代には貝貨として宝貝が用いられておりその産地は琉球諸島との説もあるようですが、現在のお金や財産にかかる漢字に「貝」の字が用いられていることからすると、腹に落ちます。例えば、「買」の成り立ちは網で貝をとる意、「賣(売)」はその「買」と出すの意の「士」で、その貝を出す意、貨幣の「貨」は「化」が化けるや人と人を表すものでその間に「貝」が介在するなりたちから、貨幣によるモノの価値交換がイメージされます。「貯」は、「ウ」が蓋で「丁」が受け皿とする入れ物のに貝を貯めるイメージも分かり易いですね。

    国内での「金属貨幣」としては、七世紀の「富本銭」や708年の「和同開珎」が有名ですが、これらは東アジアでは中国に次いで早いものとされています。それ以降、約250年間の間に12回にわたり国家的に銭貨が発行されますが、銅の枯渇などから改鋳のたびに材質を悪化させ、通貨価値が急速に悪化し、10世紀末には国内での鋳造が停止されました。その後、価値が安定した米や絹・布(麻布)といった物品貨幣の時代を経て、12世紀半ば以降、宋銭等の「渡来銭」が主となりました。その後、国内での貨幣の鋳造としては16世紀の戦国大名による「甲州金」といったところを待つことになります。その後、江戸時代には、「金銀銭(銭は銅等)」の三貨制度に移行していったのは皆さんご承知のところかと思います。
    日本最初の紙幣としては1600年頃の「山田羽書」が有名ですが、これ以降、経済の発展に貨幣の鋳造が追い付かないことなどから、「金属貨幣」を補完する形で、これらと引き換えることができる「兌換紙幣」が流通するようになります。その後も、その流通量に貴金属の産出が追い付かないとか十分な兌換準備金が不足するなどして、藩札等の発行元の「信用」に基づく(引換のない)「不換紙幣」が流通し始めます。

日本銀行本店
(出典:日本銀行ホームページより)

    明治に入り、1871年(明治4年)の新貨条例で「円」が定められ、1872年(明治5年)には政府紙幣(不換紙幣)の発行、1873年(明治6年)には国立銀行券(金兌換紙幣・1876年金兌換停止)の発行を開始しました。しかしながら、1877年(明治10年)に勃発した西南戦争の戦費調達のための大量の不換紙幣が発行されたことから、激しいインフレーションが発生してしまいました。政府は、不換紙幣の整理を図るため、正貨兌換の銀行券を発行する中央銀行を創立することとします。1882年(明治15年)に、通貨価値の安定を図るとともに、中央銀行を中核とした銀行制度を整備し、近代的信用制度の確立を図るべく、日本銀行が創立されました。1885年(明治18年)に発行された、最初の日本銀行券は、銀貨との引換が可能な兌換紙幣でした。その後、流通していた国立銀行等の発行した紙幣の回収が進み、1899年(明治32年)末にはその通用が停止され、以降、紙幣は日本銀行券に統一されることとなり、中央銀行が一元的に銀行券を発行する仕組みが整いました。さらに、1929年の世界大恐慌の影響で英国が1931年に金本位制から離脱し、日本も同年に銀行券の金兌換を停止し、金本位制から離脱しました。1942年に公布された日本銀行法により、管理通貨制度へ移行し、日本銀行券も「不換紙幣」となり、その信用により発行されています。

    当地では、こうした中央銀行による通貨の管理が始まる、明治初期に「信濃全国通用銭札」が発行されましたが、これは、通貨不足による経済の混乱・騒動拡大を防ぐため、伊那県と信濃国14藩が一致協力して発行した紙幣で、藩の枠を超えて発行されたこのような紙幣は国内では類をみないものだそうです。

ながの金融広報だより 第166号 掲載

 


国産そばの再興の道

 当地信州は日本屈指のそば処ですが、日本国内では、その原料の約7割を輸入に頼っていることを皆さんはご存知でしょうか。「そば」といえば日本固有の食文化とのイメージから専ら原料は国産と思い込んでいた私は、その事実に耳を疑いました。
実際に調べてみると、確かにかつては全量国産でしたが、その作付面積が1898年(明治31年)の179千haのピークをつけた後、収穫量も1914年(大正3年)の154千トンをピークに減少に転じ、1976年(昭和51年)のボトム時には、作付面積が15千ha、収穫量は14千トンにまで低下。その一方で、外国産は、風味は国産に劣るものの、1952年(昭和27年)の南アフリカ産の輸入を皮切りに、1963年(昭和38年)には、そばの原産地とも言われ、廉価な中国産の輸入が開始され、その後輸入量が増大したようです。
 因みに、2020年国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、世界のそばの生産量は、約181万トンで、第1位がロシアの89万2千トン、第2位が中国の50万4千トン、第3位がウクライナの9万7千トン、第4位がアメリカの8万6千トンと続き、4万トン超の我が国は世界で6番目の位置です。また、各国のそばの実を使った料理としては、ロシア・ウクライナ・東ヨーロッパでは、そばの実のおかゆ(カーシャ)、そば粉入りのパンケーキ(ブルヌイ)、中国ではモンゴル地方の押し出しそば(ヘイロ)、練ったそばをちぎって伸ばしてゆでた料理(モルンチフ)など、各地で固有の食文化があるそうです。
 もっとも、1970年代にボトムをつけたそばの国内生産は、その後、畑作に加え水田からの転作田を中心に生産拡大が図られ、2022年(令和4年)には、作付面積が65千haとボトム対比約4倍、収穫量は40千トンと同約3倍のレベルまで復しました。長野県でも、2022年の作付面積が4,310haと同時期のボトムから約5倍に拡大し、その収穫量は3,190トン(国内シェア8%)と同約6倍にまで増え、国内では北海道の18,300トン(同46%)に次ぐ全国2位に位置しています。
 また、国産の品種面でも、風味の改良に加え、多収性、難脱粒性(熟しても実が落ちにくい)および倒伏耐性等の機械化収穫適性を備えた品種開発が進んでいます。長野県でも、1944年(昭和19年)開発の主力品種の「信濃1号」に加え、1979年(昭和54年)には多収性の「しなの夏そば」が、2002年(平成14年)にはこれら奨励品種の栽培が不敵な高冷地での栽培に適した「開田早生」などが新に育成されました。さらに、2013年(平成25年)には、「信州ひすいそば」のブランドで、「信濃1号」よりも緑色が濃く香り高い特性を有する「長野S8号」を10年の歳月をかけて開発し、その後、より倒伏耐性の高い新品種「長野S11号(桔梗11号)」を育成するなど、不断の改良が進められています。こうした品種開発に加え、戸隠在来等に代表される県内各地の在来種の生産振興も相俟って、「信州そば」の魅力は一層の高まりをみせています。
 そばは、そもそも収量が少なく湿害にも弱く、近隣種と交配し品種管理も難しいこともあって、こうした官民・地域一体となった取組みが必要不可欠です。「信州そば」の愛好家としても、これまでの関係者の取組みにも思いを馳せ、信州を代表する食文化を堪能していきたいと思う次第です。
ながの金融広報だより 第165号 掲載

 


SDGsな金融広報を目指して
~サステナブルな「ながの金融広報だより」のペーパレス化~

 「ながの金融広報だより」は、県民の生活向上を目的に、1968年8月1日に創刊、以降、本号で164号の発行を数え、50有余年の歴史を有します。
 その当時我が国は、経済成長率が名目で18.4%と高い伸びを続けており、西ドイツを抜いてアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となった年でもありました。創刊号は、委員会運動方針として、戦後復興のための貯蓄奨励から、高度経済成長期を経て欧米並みの豊かさを求めて消費拡大が続く下で「現在の貯蓄は将来の消費に繋がる」とする計画貯蓄の奨励を掲げる中、「貯蓄推進だより」の名称でスタートしました。
 1970年代に入ると、二度のオイルショックを経て金融・経済面では構造改革の時代に入り、個人の価値観も多様化しました。委員会の運動も貯蓄に集点を当てるのではなく、広く金融経済に関する情報を提供することが国民のニーズに適うとして、貯蓄推奨から金融広報へ軸足を移し、本広報紙名称も、2000年第92号からの「ながの貯蓄広報だより」を経て、2002年の第96号より、現在の「ながの金融広報だより」に改称されました。
 その後も、2005年のペイオフ解禁や2008年のリーマン・ショックを契機に国内外で金融リテラシー向上が重要課題になり、2020年から22年度にかけては小中高で金融教育が必修化されるに至りました。こうして金融教育・金融リテラシーへの社会的関心が高まる中、当委員会では、来年度より「ながの金融広報だより」をペーパレス化のうえ、環境・作業負荷にも配慮しつつ、より多くの人々のアクセスを可能とする金融広報に取り組むこととしました。
 具体的には、現在「ながの金融広報だより」は、年3回発行し、各約5万部(年間約15万部)を当委員会から各自治体に郵送のうえ、多くの関係者を介し配布していますが、これをペーパレス化し、当委員会ホームページの電子版に一本化することとしました。また、これを機に、スマホ等の携帯端末でのアクセスを容易化し慫慂することで、より多くの個人に対し手軽に金融広報・金融教育にかかる情報を入手できるようにします。金融経済講演会等の広報イベントでは、申込から参加証の発行までがすべて携帯端末上で完結するなど、利便性の向上が図られます。
 一方で、デジタルデバイド(インターネット等を使用できる人とそうでない人との情報格差)の面についても配慮します。電子版広報だよりの印字機能の維持を含め、紙ベースでの情報の授受を維持することは勿論のこと、新聞広告等の他の媒体・チャネルの活用を図り、これまで以上に多くの人々に、金融広報・金融教育にかかる情報が行きわたるよう努めていきます。
 先ずは、「ながの金融広報だより」をご愛顧頂いております皆様、この機会にQRコードまたはURLをご登録ください!
ながの金融広報だより 第164号 掲載

 


信州・長野県に赴いて

 善光寺御開帳の終盤、本年6月に当地に赴任し、長野県金融広報委員会事務局長に就任しました。
 当地のイメージとしては、旅行で訪れた際の雄大な自然が強く心に残っていましたが、赴任後の生活や挨拶回りを通じ、改めて、当地が地域色豊かな風士、歴史、文化等の魅力溢れる地であることを実感しています。
 当地は、「教育県長野」とも言われますが、金融教育の面におきましても、「金融リテラシー(お金の知識・判断力)」は、全国トップクラスに位置付けられています。
 本年7月に金融広報中央委員会より公表された「金融リテラシー調査」(2022年)では、長野県は金融リテラシーに関する正誤問題の正答率が47都道府県中5位となりました。今回が3回目の調査となりますが、2016年以降3年おきに実施されたいずれの調査でも常に上位を維持(第1回7位、第2回2位)しています。こうした成果は、金融教育の裾野の広がりの証左であり、関係するすべての皆様の継続的な取組みの賜物だと感じています。
 この「金融リテラシー」は、2008年に起こった世界金融危機の教訓として国際的にも注目が集まるようになりました。その後、2012年のG20ロスカボス・サミットの首脳宜言において、各国が戦略的かつ計画的に国民各層への金融教育に取り組むことの重要性が強調され、2019年に日本が議長を務めたG20財務省・中央銀行総裁会議では、金融リテラシーの強化が優先的に対処すべき政策課題と位置付けられました。
 今や、国内でも「人生100年時代」とも言われる超高齢化社会が到来し、本年4月の「成年年齢引き下げ」により18歳というその世代の多くがまだ高校生の時期から自立した契約当事者としての判断と責任が問われる時代になり、金融リテラシーの重要性は増す一方です。
 今回調在で全国5位の当地でも、「正当率(得点)8割超の高リテラシー者の割合」や「家計を切盛りする世代の正答率」が相対的に低いことや、「金融トラブル経験者比率」が比較的高い点をみると、これまでの歩みを止めることなく、さらなる高みを目指していくことが肝要に思います。
 当委員会では、引き続き、金融リテラシーのさらなる向上・普及教育活動に取り組んでまいりますので、皆様のご活用・ご支援を賜りたくお願い申し上げます。
ながの金融広報だより 第163号 掲載

 


善光寺御開帳

 今年の冬は例年に比べ雪が多かったように感じます。積雪の都度、私も駐車場の雪かきに追われました。朝晩の冷え込みも含め、改めて雪と共に暮らす大変さを実感しました。もっとも、寒く厳しい冬を過ごしたからこそ、雪解けとともにやってくる信州の春がまぶしく美しく感じるのかもしれません。

 昨年は新型コロナの影響で花見が出来ませんでしたので、今年こそはゆっくり花見を・・・と考えていましたが、長野市では、桜の開花宣言と共に初夏のような陽気となり、あっという間に桜の季節が過ぎていきました。ただ、今年は散り始めのタイミングではありましたが、美しい桜を見ることができましたのでとても満足です。

 現在、新型コロナウイルス感染症の影響から1年延期された善光寺御開帳が開催されています。コロナ禍3年目で初めての行動制限なしのゴールデンウィークは比較的天候にも恵まれ、街には多くの観光客の姿がみられました。

 私も混雑を避け、比較的空いている時間帯を狙って善光寺に向かい、手指の消毒後に回向柱に触れさせていただきました。また、内陣参拝、お戒壇めぐり、御印文頂戴、経蔵、歴代回向柱納所、仏石足、山門、仁王門など、見どころ満載の善光寺参りをしてきました。無事、功徳を授かれると良いのですが・・・。

 さらに、長野駅から善光寺までの街角を花で彩る「善光寺花回廊」というアートイベントも覗いてみました。初夏のような強い日差しの下、歩行者天国となった中央通りに色鮮やかな花々が美しく飾られ、多くの観光客を魅了していました。芸術的な素養の低い私も中央通り沿いのお店で買ったソフトクリームと共に花々が織りなす造形美を楽しみました。

 今年度の長野県金融広報委員会の幹事会および委員総会につきましては、新型コロナウイルス感染症の収束がなかなか見通せない中、感染拡大防止の観点から対面開催を見送り、書面開催とさせていただきました。感染症の影響については、引き続き不透明感が強いものがありますが、今年度も感染防止対策を十分講じながら、金融教育や金融知識の普及活動に取り組んでまいりますので、皆様のご理解ご協力をお願いいたします。

 今回の善光寺御開帳は1か月間延長され6月29日まで開催されています。新型コロナの収束と一日でも早く世界に平和な日常が訪れるよう、改めて善光寺にお参りしたいと思います。

ながの金融広報だより 第162号 掲載

 


秋の訪れとともに新型コロナが収束?

 11月中旬にこの記事を書いていますが、信州の秋も深まり、黄色や赤の美しい景色を見せてくれていた木々の葉も少しずつ散り始めています。朝晩の冷え込みも強まってきており、一気に冬が近づいているように感じます。
 前任の沖縄では、「ミーニシ(新北風)」が吹くと暑さも和らぎ、過ごしやすい秋がやって来ると言われます。「ミー」は新しい、「ニシ」は北を表します。沖縄の言葉(ウチナーグチ)では、東西南北を順にアガリ、イリ、フェー、ニシと言います。アガリ、イリは、日の出、日の入りが語源らしく分かり易いのですが、フェ一、ニシには、いくつかの説があるようで、私自身はっきりしたことは分かりません。ただ、語源はともかく、「北がニシ」というのはとても紛らわしく、沖縄初心者の間でネタとしてよく語られる話題です。
 ところで、新型コロナウイルス感染症の第5波もほぼ収束したように思われます。なぜ急に収束したのかわかりませんが、まずは一安心です。首都圏の緊急事態宣言も明け、善光寺や松本城などの観光地では家族連れや修学旅行生などが散策する姿が見られ、街のにぎわいも少しずつ戻り始めているように思います。
 こうした中、長野県金融広報委員会では、感染対策等をしっかりと取っていただいたうえで、各金融教育研究校に、公開授業や講演会を開催していただいています。私も公開授業や講演会にお邪魔していますが、先生方が熱心に授業に取り組む姿や生徒たちのまっすぐな眼差しで授業に臨む姿は、将来に希望を感じさせてくれる時間でした。
 また、この金融広報だよりの表紙にありますように、長野県金融広報委員会では、落語家の林家彦いち氏をお招きして、年明け2月に金融経済講演会を開催いたします。お時間のある方は是非ご参加いただければと思います。
 最後に、社会経済活動の活性に努めようといった趣旨で、県、市町村、経済・観光・労働団体が「社会経済活動 の活性化に向けた申し合わせ」を公表しています。私自身2回のワクチン接種を特段の副反応もなく終えていますし、この申し合わせにもある「信州版新たな会食のすゝめ」や「信州版新たな旅のすゝめ」が求める感染防止対策 を徹底しながら、外出や会食・県内旅行を楽しみつつ、社会経済活動の活性化に微力ながら協力していきたいと思います。皆さんも、感染防止対策を徹底しながら、会食や県内旅行に出かけてみてはいかがですか?
ながの金融広報だより 第161号 掲載

 


コロナさえなければ…

 7月23日~8月8日の17日間にわたって開催された東京2020オリンピックが閉会しました。
 連日の厳しい暑さの中で、選手たちの素晴らしい活躍や協議後に互いを称え合う姿が共感を呼びました。また、大会を支えたスタッフ・ボランティアの方々の思いやりあふれる誠実な取り組み姿勢に対する称賛の声や、選手へのとっさの判断によるサポートが金メダルに繋がり、それがまた国際交流に繋がっていくという心温まる話題にも心を動かされました。
 ただ、「コロナさえなければ…」と何度も思ったのも事実です。
 新型コロナウイルスの影響で、ほとんどの会場が無観客となり、予定されていた関連行事の多くも中止・縮小となりました。各国の事前合宿についても、多くが中止となったほか、ホストタウンとして海外選手を受け入れた自治体においても、選手と住民との交流などは見送られ、離れた場所から練習を見守るのみとなったケースが多かったようです。また、1998年の長野オリンピックから始まった「一校一国運動」についても、今回のオリンピックを機に首都圏の多くの学校で取り組まれたようですが、新型コロナの影響から活動に大きな制約を受けてしまったそうです。
 インターネットやSNSにより、世界の国々の歴史、文化、言葉など海外の情報を容易に得られる時代になっていますが、海外のオリンピック選手や代表団とのリアルな交流を通じて、スポーツの楽しさ、素晴らしさのみならず、諸外国との友好親善や相互理解など様々なことを「実体験」できる貴重な機会を逃してしまったことが残念でなりません。コロナさえなければ…。
 現在、新型コロナウイルス感染症の第5波が到来し、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域が拡大しています。長野県においても、感染の拡大が懸念される状況が続いています。当委員会におきましても、引き続き感染防止対策を十分講じながら、金融教育や金融知識の普及活動に取り組んでまいりますのでよろしくお願い致します。
ながの金融広報だより 第160号 掲載

 


よろしくお願いします

 昨年12月に長野県金融広報委員会事務局長に就任しました石川と申します。コロナ禍の厳しい状況ではありますが、長野県の金融広報活動に精一杯取り組んでまいります。何卒よろしくお願いします。
 さて、ふと気付くと桜の季節が過ぎ、周りを見渡せば、いつの間にか街路樹のみずみずしい緑や色とりどりの草花を目にするようになりました。心地よい風に吹かれているだけで、すがすがしい初夏を感じ、気持ちも穏やかになります。
 ただ、今年は全国的に梅雨入りが早いようです。前任地の沖縄では、例年、全国に先駆けてゴールデンウイーク明けに梅雨入りし、慰霊の日(6月23日)頃に梅雨が明け、青い空、白い雲そして刺すような強い日差しとともに、一気に南の島の夏がやってきます。この「ながの金融広報だより」159号が発行される6月には当地も梅雨の真っ只中かと思いますが、早くカラッと過ごしやすい季節となってほしいものです。
 ところで、金融教育や金融広報活動においても、各種イベントの中止・縮小を余儀なくされるなど、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を強く受けています。幸い、オンライン化の取組みにより、遠隔地の方との打合せが容易になったり、移動時間が短縮されたりと、様々なメリットも出ているように思います。
 感染症の影響については、引き続き不透明感が強いものの、ワクチン接種が進む中で、一日も早く平穏な日常を取り戻し、世の中に明るい空気感が広がることを祈るばかりです。
 金融広報活動には、多くの皆様に多大なるご協力をいただいております。今年度も感染防止対策を十分講じながら、金融教育や金融知識の普及活動に取り組んでまいりますので引き続きよろしくお願い致します。
ながの金融広報だより 第159号 掲載

 


長寿社会への備え

 少し前の話になりますが、今年の7月31日に厚生労働省が「令和元年簡易生命表」を公表しました。これによると、日本人の平均余命は男女ともに前年よりも伸びており、男性は81.41歳、女性は87.45歳になったそうです。今から約30年前の平成2年時点では男性の平均余命が75.92歳、女性は80.48歳でしたから、この間に我々日本人の寿命は5年以上も伸びていることが分かります。
 国際的にみても日本の女性は世界一、男性は同2位(1位はスイス)の長寿命国です。
 都道府県別の平均余命は5年毎の公表となっており、今年は調査が行われていませんが、直近の平成27年時点でみると長野県は男性が全国第2位、女性は同1位と長寿命県であることが分かります。
 寿命が伸びることは良いことですが、生活設計面では注意が必要です。総務省の「家計調査報告」(2019年)によると、高齢夫婦無職世帯の場合、毎月の支出が約24万円である一方、収入(可処分所得)は21万円弱となっています。つまり収入が年金などに限られることなどから、支出が収入を上回ってしまうわけです。毎月でみればわずか数万円の赤字ですが、仮に毎月の赤字が3万円としても年間では36万円、10年では360万円にもなります。
 今やわが国で95歳まで生きられる方は、男性で約10%、女性では約27%にも上ります。老後にどの程度の収入が見込めるか、どの程度の支出が発生しそうかは個人差が大きいので、一概には言えませんが、老後の収支が赤字になると見込まれる場合には、そこに至る前までに十分な金融資産を準備しておくことが不可欠になります。
 私ども長野県金融広報委員会では、関係機関の協力もいただながら大学生や高校生などの若い世代を対象にした金融教育に取り組んでいますが、こうした統計を踏まえると、ますます若い世代への金融教育の必要性が高まっていると気が引き締まる思いです。今後も長野県内の学生・生徒に適切な資産形成ができるようアドバイスをしていきたいと思います。
 同時に思うことは自分自身の生活設計についてです。お酒の飲み過ぎに注意するほか、適度な運動を継続することを通じて、心身ともに健康寿命を伸ばしつつ、少しでも長く働いてささやかながら家計の足しにしたいと思いました。ただし、ここはお酒がおいしい長野県。節酒がいつまで続くかは私の忍耐力がどれだけ強いのかに依ります。
ながの金融広報だより 第158号 掲載

 


私はダマサレナイ!!

 今年の7月、長野県金融広報委員会事務局長を拝命した相沢康裕と申します。今後、長野県の金融広報を担当させていただきます。何卒宜しくお願いします。
 ひさしぶりに金融教育関連の仕事をすることになったこともあり、ある日自宅のパソコンで金融広報関連の情報を探していたところ、警察庁のホームページでオレオレ詐欺を含む特集詐欺の認知等件数を取りまとめたデータをみつけました。
 これによると、今年前半(1〜6月)の間に全国の警察が認知した特殊詐欺件数は6千8百件あまり、被害金額は128億円超となっています。随分と大きな被害だと驚くばかりですが、それでも昨年の同じ時期(2019年1〜6月)に比べると、認知件数で14%程度、被害金額でも15%程度減少しています。こうした傾向は長野県でも同様です。長野県警察本部が作成した資料によると、特殊詐欺の発生件数(今年1〜7月)は、71件と昨年同時期の77件に比べて減少しています。また、被害金額も約1億3千万円と昨年同時期の約1億7千万円に比べて減少しています。被害件数や被害金額が減少していることについては、警察や金融機関など多くの関係者の詐欺被害防止に向けた取り組みが奏功している面も大きいと思われます。
 警察庁が作成した統計をみてもうひとつ驚いたことがあります。ひとことで特殊詐欺といっても中身はさまざまで、かつ年を追うごとに手法が多様化していることです。平成17年までの特殊詐欺の内訳は、オレオレ詐欺、架空請求詐欺など3類型だけだったにもかかわらず、途中から還付金請求詐欺、金融商品等取引名目などが追加されるなど数回の見直しを経て、平成30年以降は10類型にまで増えているのです。守る側が何か対策をすれば、敵も新しい手段で攻めてくる。この繰り返しが類型の増加につながっていると推察されます。
 この統計には、特殊被害詐欺に遭われてしまった方の年齢別構成比も公表されています。手元で計算をしてみると、実に被害者の86%弱は65歳以上の高齢者であることがわかります。とりわけ目立つのが70歳から89歳までの女性で、この階層だけで被害者全体の6割を占めているのが実情です。
 引き続き、各層への金融教育を継続しつつ、高齢者向けの詐欺被害防止に向けた取り組みが求められていると痛感した次第です。
 金融広報中央員会が四半期ごとに発行している「くらし塾きんゆう塾」という冊子では、毎号「わたしはダマサレナイ!!」という記事を通じて最新の特殊詐欺や消費者が誤解しやすい詐欺の手口などの最新の事例を紹介しています。冊子はホームページでもご覧いただけますし、事務局にご連絡をいただければ個別に郵送させていただくことも可能です。ご興味のある方は一度冊子をご覧ください。
ながの金融広報だより 第157号 掲載

 


新型コロナウイルスとの共存社会

 緊急事態宣言が1か月半ぶりに全面解除となった。手入れされた花々と新緑に彩られた善光寺表参道には、清々しい初夏の風と共に、通勤や散歩で往来する人の姿が徐々に賑わいを戻しつつある。とはいえ、このウイルス感染症に対する有効なワクチンや治療薬がない中での全面解除であり、引き続き感染拡大の防止を図りながら、如何にして日々の生活や経済活動を再開していけるかが試されることになる。一つ言えることは、かつての日常を元通りに取り戻すことは中々難しそうだということである。ウイルスとの共存を前提に、これまで省みることのなかった社会慣行や行動様式の変革を受け入れていかざるを得ない部分も出て来よう。
 私の仕事にも既に小さな変化が起きている。私が非常勤講師を兼任する長野県立大学では、学生の感染防止を図るため、通常の対面授業に代えて遠隔会議システムを活用した非対面・同時双方向型のリモート授業を行っている。学生が一人もいない教室でパソコンを介して繋がる学生に自分が話しかけている様子は、何とも奇妙な風景ではないか。そもそも非対面の講義の教育効果には限界があるとの声も少なくない。もっとも、そうした懸念に反して、これまでのところ学生とのコミュニケーションは想像以上に活発であるように思うし、一部の学生からは移動時間の節約を歓迎する声も聞かれている。私自身は老眼かつ遠隔会議システムの取扱いに不慣れということもあり、眼・首・肩・腰の疲れが酷くコンディション維持の費用がばかにならないが、講義全体のコストという視点で考えてみると、効率化が図られ、地球温暖化防止にも一役買っているという側面が見えてくる。
 今回の感染症への対処の過程では、我が国のIT活用の遅れ、非効率な社会慣行などが各方面で露となった。社会・経済のグローバル化の下では、ハイスピードで変化する世界の潮流に一層目配りし、我々の社会が大きく取り残されていないか省みる姿勢を持ち続けるとともに、柔軟に環境適応していくことの重要性を今更ながら痛感させられている。当面の最大の課題は、感染拡大の防止を図りながら、生活、雇用、その源となる経済を守ることであるが、私の小さな経験も踏まえると、今回の行動制約を我々の社会慣行や行動様式を改めて見直す契機とすることがとても重要ではないかと感じている。
ながの金融広報だより 第156号 掲載

 


「生きる力」を高めたい

 信州で2回目の秋は、台風19号による甚大な被害を目の当たりし、自然の力の怖さを改めて思い知らされることとなった。私の身近にも、自宅が被災し仮住まいでの生活を余儀なくされている方々や休校により学習機会を損なわれた児童・生徒さんたち、業務に支障が出ている企業の方々が数多くおられる。今回被災された方々が一日も早く生活再建、生業再建されますよう、心よりお見舞い申し上げます。
 私の出身地である兵庫県は、平成7年1月に阪神淡路大震災に見舞われ、神戸市に隣接する私の実家も被災した。当時、第二次世界大戦後に発生した自然災害では最悪のものとされたが、今では復興が進み、街並みは平静を取り戻している。もっとも、罹災から四半世紀を経て、当時の経験や教訓が風化することへの懸念が高まっており、改めて過去の災害に学ぶ取り組みが進められている。南海トラフ地震や地球温暖化による豪雨など今後発生するおそれのある激甚災害に備えた動きだ。
 当地では、まずは復旧・復興を強力に推し進めることが喫緊の最優先課題であることは言うまでもない。ただ、今回の辛い経験・体験を将来の防災減災に最大限活かし、「生きる力」の更なる向上に繋げていく取り組みを合わせて進めていくことも大変重要だと思う。
 さて、私の勤務する日本銀行長野事務所では、この秋から小中学校向けにお金に関する体験学習のプログラムを提供している。お金の知識を広め、子供たちの「生きる力」を高める金融教育の推進を狙ったものである。先日、須坂市内の小学校6年生33名が社会見学の一環で当事務所を訪れ、お金の成り立ちや機能、普通の銀行と日本銀行の役割の違いなどについて学ぶとともに、お札の偽造防止技術や紙幣1億円パック・金塊等の重さの体験、使えなくなった損傷紙幣の裁断片による工作等を行った。真剣な眼差しで話を聞き、熱心にノートをとる子供たちの姿は大変印象的であり、最後のまとめの時間では、講話で直接触れることのなかった外国為替に関する質問や、5年後の改札に絡めて「新札と旧札の切り替えはどのように行うのか」といった質問が相次ぐなど、子供たちの熱気と好奇心に圧倒されそうな時間を共有させて頂いた。あっという間の2時間であったが、楽しい経験・体験として子供たちの記憶に残るとともに、今後の学習意欲に繋がってくれたら嬉しく思う。
ながの金融広報だより 第155号 掲載

 


長野県民の金融知識・判断力は全国トップ水準に

 金融広報中央委員会が全国18歳~79歳の個人、2万5千人を対象に実施した「金融リテラシー調査」の結果を公表した。長野県は、「金融知識・判断力に関する正誤問題」の正答率が都道府県別で全国2位となったほか、3年前の前回調査で課題とされた若年層の正答率の低さも大幅に改善し、全国40位から6位へと大躍進した。
 同委員会の分析によれば、「金融教育を受けたと認識している学生」の正答率(53.6%)は、「そうでない学生」の正答率(39.6%)よりも高いとのこと。長野県では、「学校等で金融教育を受けた人の割合」が前回調査時の6.1%(全国29位)から8.8%(同4位)へと上昇しており、これが今回の正答率改善に繋がっている可能性もありそうだ。数字は幅をもって解釈する必要があるが、県内の金融経済教育の推進に携わる者として、今回の調査結果を素直に喜びたい。
 金融リテラシー調査では、「行動特性・考え方等」に関する調査も併せて実施している。本県は、「お金について長期計画を立てる人の割合」(全国33位)や「生命保険加入時に他社の商品と比較した人の割合」(同40位)が全国平均と比べ低い。実生活における生活設計や金融商品選択の場面において、必ずしも望ましい行動が取られていない面もあるようだ。全国2位の正答率に甘んじることなく、更なる金融リテラシー向上が必要である。
 信州は、いよいよ、日本一ともいえる爽やかな秋、実りの秋を迎える。今年度、県内4大学において既に約500名の学生が金融リテラシー講義を受講した。11月には赤穂南小学校が2年間の金融教育研究の成果として公開授業を開催する。こうした金融教育で得た知識・判断力が、若者や子供たちの今後の人生において、夢や希望の実現に資する果実となって欲しいと思う。
ながの金融広報だより 第154号 掲載

 


時間資産の活用を再考する

 この4月から、県内の幾つかの大学で、1・2年生を対象に金融リテラシー を教えている。わが国の将来を担う若者達が、親世代とは異なる社会・経済環境の下で、夢や希望を実現し豊かな人生を送る上で必要となる ”金融・経済の基礎知識” と ”金融取引における判断力” を身に付けることに主眼を置いたものだ。決して裕福になる方法ではなく、国家財政の厳しさが増す中にあって、若い世代には実感がわき難い”老後”も視野に入れた金融資産の形成等について話をしている。
 人生の時間軸の中で、学生時代は、やはり若さと時間が最大の強みではないだろうか。しかし、それはあっという間に過ぎ去ってしまう。いずれ社会に出ていくことを踏まえると、只々楽しく時間を消費するだけではなく、時間を限りある貴重な資産と位置付けて、将来、社会に提供できる付加価値を創造する力に変えていくことが大切だと思う。時間の消費ではなく投資だ。学間のみならずクラブ活動やアルバイトなど様々な経験をし、また様々な人と接することを通じて、コミュニケーションカを高め、付加価値創造力を蓄えてもらいたい。
 時間資産の有効活用の重要性は、学生世代に限った話ではない。人に寿命がある以上、むしろ筆者のような中高年以上の世代においては、時間資産の希少性はより高まる筋合いにある。筆者は、大学で講義を行う機会を得たことを契機に、自分自身の時間資産の使い方について再考するようになった。老後を視野に入れたお金の使い方、金融資産の必要性は意識してきたが、時間資産の使い方にはやや無頓着になっている姿に気付かされた。反省しきりである。今後の人生でやりたいこと、なりたい自分を明確にし、計画的に時間を使わなければとの思いを新たにしている。最近、リカレント教育の意義が各方面から提唱されている。今、学校で再教育を受ける余裕はないが、手近なところで始められることはたくさんある。まずは中学から学んだ英語の再学習に取り組もうと考えている。
ながの金融広報だより 第153号 掲載

 


目標を持つことの意義について

 この10月、仕事の合間に、1か月掛かりでドイツ・ロマンティック街道を歩いた。同街道は、世界遺産の領主司教宮殿を擁する古都ビュルツブルクを起点に、ノイシュバンシュタイン城を経由してオーストリア国境地に近いフュッセンに至る、全長336.7kmの観光街道である。
とはいっても、これはあくまでもバーチャル(仮想)の世界のお話。筆者の職場では10月を健康増進月間と位置づけて、役職員が各自の体力に応じて仮想のウォーキング・コースを選択・登録し徒歩で完結を目指す、健康イベントを開催している。ロマンティック街道はその中で最上級(最長距離)のコース。実際には、週末を活用して善光寺を起点に小布施や戸倉上山田温泉などに足を延ばしたり、金融教育研究校や行政機関等への訪問時に可能な限り歩くことで、累計351kmを稼いだ。1日当たり平均で11kmを毎日歩いた計算となる。
この取組みを通じて筆者が改めて認識したのは、目標を持つことの大切さである。今回は、実現はそう簡単ではないが、決して無理ではない目標を設定したことが奏功した。無理な目標ではないから辛い時の頑張りがきくし、ストレスではなくチャレンジすることの喜びを感じることができる。やや大袈裟かもしれないが、これは人生のあらゆる局面に相通じるものであるようにも思う。常に目標を持って有意義に過ごすことを心掛けたいものである。因みに、今回は目標達成の喜びだけではなく、信州の風を感じながら、美しい紅葉、豊かな温泉、高品質のワイン・日本酒に秋の味覚というおまけまでついてきたことは言うまでもない。今度は信州で過ごす初めての冬に向けて、どういう目標を掲げようか。
ながの金融広報だより 第152号 掲載

 


気象災害に思う金融教育の意義について

 この夏は、記録的な猛暑に集中豪雨・洪水など気象災害が全国各地で発生し、過去例をみない人的被害が発生したほか、社会インフラ等の経済的被害も非常に大きなものとなりました。信州でも例年にない高温・猛暑が続き、体調を崩された方も少なくなかったのではないでしょうか。この場をお借りして、心よりお見舞い申し上げます。
筆者は前職において、地球温暖化対策と地域活性化の二つの視点から、地域金融機関や地方自治体との連携の下で、民間主導の再生可能エネルギー事業に国の資金を投入し金融面から事業化を支援する環境省の事業に携わっていました。この夏、改めて気候変動の怖さと、スピード感を持って対応を進めていくことの必要性について強く認識したところです。
さて、長野県金融広報委員会では、小・中学校から大学に至るまでの学校における金融教育の充実に取り組んでいます。その原点は、人口減少など社会環境の変化が進む下で、将来を担う人材が、人生おける様々な局面で有限性のあるお金を有効に活用するための知恵と、自ら必要な情報を収集し合理的に判断できる力を養うことにあります。しかしながら、ここで身に着ける能力は、お金の領域だけに止まらず、地球温暖化も含め世の中のあらゆる事象に対し、広く有限な資源を如何に活用していくべきかを主体的に考える力、換言すれば、積極的に社会と関わりを持ちながら生きていく力に通じると考えています。
先日、この秋に公開授業を予定している金融教育研究校を訪問し担当の先生や校長先生・教頭先生方と授業内容の打ち合わせを行いました。各校では先生方が地域や学校の特性を踏まえた興味深い学習テーマを準備されていました。そうした学習機会に触れる児童・学生を増やしていくことで、長野県の人材教育に僅かでも貢献できればと思います。
ながの金融広報だより 第151号 掲載

 


はじめまして

 この4月に着任致しました松尾と申します。県内での金融経済教育の支援ならびにタイムリーな金融経済情報の提供に尽力して参る所存でございますので、どうぞ宜しくお願い致します。
さて、私たち親世代とは異なり、若者が長い人生をより豊かに過ごしていくためには、金融取引・契約における自己判断と自己責任、財政悪化などを踏まえた生活設計が不可欠であり、最低限の金融知識を身に付けなければならない時代となりました。家庭においては小学校から大学など高等教育までを見据えた必要資金の準備や奨学金の返還、社会人にとっては特殊詐欺防止への対応と中長期の資産形成などが重要な課題となっています。こうした状況を踏まえ、私どもでは、すべての世代が新しい時代を生きる上で必要な資質・能力を育むことを目指して、金融広報活動を展開して参ります。私どもが、4月から新たに長野大学で「生活と金融」をテーマに半期15コマの連携講座をスタートさせたのも、その一環としての取組みです。
私は長野県での勤務は初めてですが、プライベートでは、スキーに温泉、善光寺参り、雪解けの上高地など東京から家族連れで度々お邪魔してきた地です。今回は単身赴任であるが故、家族と当地の良さを分かち合うことは適いませんが、仕事に限らず、趣味の遠距離歩行(気が乗れば1日で30〜40kmを歩きます)も兼ねて、自分の足で県内を歩き回って、より多くの自然や文化、人々との出会いを深めることで、「信州の風」を感じ、また少しでも良い風を吹かせるお手伝いができればと思っています。
ながの金融広報だより 第150号 掲載

 


PTAの皆様とともに行う金融教育

 長野県金融広報委員会では、本年度からPTAと連携した金融広報活動に取り組んでいます。一例として、本年7月に、長野市PTA連合会の皆様と共催で、小中学生の保護者向けに、ファイナンシャルプランナーの合田菜実子先生をお招きし、「教育費の準備と家計について考えよう」と題する講演会を実施しました。そして、講演会実施後、金融広報アドバイザーにも加わってもらい、小学校と中学校の保護者に分けて討論会を実施しました。当委員会が、PTAの皆様と連携して活動を行うのは、初めてでした。
講演会・討論会は大盛況でした。PTAの皆様の働きかけもあって、153名の方に参加頂きました。終了後の反応を伺うと、「これから教育費がどれ位かかるのか殆ど知らなかっただけに、きちんとした数字で教えてもらって、大変有難かった」、「特に大学入学のところで高校までとは違う多額の費用がかかることがよくわかった」などの声が多く寄せられ、非常に好評でした。
その中で、「来月から主人のこづかいを半分に減らさないとやっていけない」と発言された方がおられ、周囲の主婦の方々も皆が頷くというショッキングな場にも遭遇しました。個人的には背筋の凍る思いをしましたが、皆様の将来の生活設計に少しでもお役にたてたのではないかと実感することができ、この講演会・討論会を行って本当に良かったと思いました。
私どもとしては、今後とも、PTAの皆様と一緒に金融広報活動を行っていきたいと考えております。是非お声をかけて頂きたく、よろしくお願い致します。
ながの金融広報だより 第149号 掲載

 


大学における金融教育の活性化

   
 前回は、長野県における学校での金融教育の機会を、今後さらに増やしていきたい旨をお伝えしました。とりわけ力を入れていきたいのが、これまであまり行われてこなかった大学での金融教育の活性化です。
大学生は、一人暮らしの方も多く、お金の問題が生活の一部となっている方も多いと思います。それだけにトラブルに巻き込まれ、被害に遭われる方も増加しております。また、アルバイトを行っているつもりで、実は詐欺事件の加害者になってしまうといった極端な事例も増えています。
そこで、大学生の皆さんに対して、お金・金融に関するトラブルを避けて頂くために、またより豊かな人生設計を行って頂くために、大学から授業のコマを頂いて、お金や金融に関する留意点等をお伝えすることは非常に重要なことであると考えています。金融の複雑化、詐欺事件の巧妙化などもあって、お伝えしたいことが山ほどあるというのが実情です。私どもでは、大学教育は、系統立てて物事を伝えていく最後の機会であると捉えています。全国では、「金融リテラシー講座」と称して、半期15コマの授業を行う動きが広がっています。今後はこのような連続講義を長野県内の大学でも行って行きたいと考えています。大学関係者をはじめ皆様のご協力・ご支援を頂きたいと思っております。どうぞよろしくお願い致します。
ながの金融広報だより 第148号 掲載

 


学校における金融教育の充実を

   
 前回は、金融広報中央委員会が行った「金融リテラシー調査」に基づき、お金や金融に関する長野県民の特徴・課題についてお伝えしました。この中で、金融知識に関するテストの正答率が長野県は全都道府県中第7位で、東日本では第1位であったこと、但し18〜29歳の若手世代の正答率は全国第40位とふるわなかったことをお伝えしました。何故若手世代の正答率がこれほど低いのでしょうか。一つの答えが本調査中にあると考えています。それは、「学校において金融教育を受けなかった人」の割合が、長野県は79.1%(全国平均73.9%)と非常に高かったことです(全都道府県中、下から2番目の第46位)。
現在、私どもでは、「青少年生活設計講座」を県内全ての高校、大学、専門学校等を対象に行っています。これは、私どもの金融広報アドバイザーが、学校を訪問し、金融やお金についての知識や判断力を高めるための授業を行うものです。昨年度、本講座を受講した生徒・学生は2,624名にのぼりました(前年度1,813名)。卒業生のための巣立ち教室などで、多くの学校にご利用頂いておりますが、上記した「金融リテラシー調査」の結果を考えると、さらに多くの学校でご利用頂きたいと思います。私どもも募集案内の発出回数を増やすなど情宣に努めて参りますが、教育関係者をはじめ皆様方のご協力を是非お願いしたいと思います。
ながの金融広報だより 第147号 掲載

 


長野県民の金融知識は全国第7位

   
 本年8月に長野県金融広報委員会事務局長に就任しました外(ほか)と申します。長野県の金融教育・知識普及に全力で貢献したいと考えています。宜しくお願い致します。
本年6月、金融広報中央委員会は、全国約2万5千人を対象にして行った「金融リテラシー調査」の結果を発表しました。国民のお金の知識や行動特性を把握するための調査としては、わが国初の大規模調査で、都道府県別の分析も行っています。そこで、本コラムでは、数回にわたって、本調査を用い、長野県民の金融に関する知識・行動の特徴を探っていきたいと思います。
本調査では、まず皆様に金融知識に関するテストを行って頂いておりますが、長野県の結果は、全国47都道府県中第7位と非常に優秀なものでした。全国の順位を上から見ますと、奈良県、香川県、京都府、岡山県、鹿児島県と、西日本勢が上位を占めています。第6位の福井県を西日本に分類しますと、長野県は、東日本のトップということになります。さすが「教育県・長野」の面目躍如といったところでしょうか。
ただ、良いことばかりではありません。テスト結果を年齢層別にみますと、30〜59歳は第5位、60〜79歳も第15位と健闘していますが、18〜29歳の若手世代が第40位と低い順位になってしまいました。ここらあたりに長野県の金融教育の課題があるのかもしれません。次回は、長野県民の金融行動に関する特性をみていきたいと思います。
ながの金融広報だより 第146号 掲載

 


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